大江健三郎の「「雨の木」(レインツリー)を聴く女たち」を30年ぶりに再読した。吉本隆明の「マスイメージ論」で、村上春樹の「羊をめぐる冒険」とこの「レインツリー小説」が時代を象徴する小説として高く評価されているのを読んで、単行本を購入した。「雨の木」(という暗喩)が初老の作家の「死に向けて年齢を重なる」ということの解体感性をとても抒情的にに表現している。(作品から)「ハワイの「雨の木」は、この島で繰り返される深夜の驟雨を、葉の窪みに一滴づつためこむようにしてたくわえ、次の昼すぎまで滴をしたたらせつづける」。その滴りは死に向かって年を重ね、様々な過去の記憶からくる者の憂鬱を癒すメタフォーだ。大江さんのうねるような思弁的な文体が独自の抒情性を紡ぎだす秀作。 http://ja.wikipedia.org/wiki/「雨の木」を聴く女たち http://books.google.co.jp/books/about/マス_イメージ論.html?id=ElOgmQEACAAJ&redir_esc=y