加藤典洋「戦後史」を読む。

批評家加藤典洋さんの「戦後史」を読んだ。第二次大戦中に英米露の政治家が「無条件降伏」について話し合った事実をふまえ、その直前に核爆弾の実験に成功したルーズベルトが核の使用を前提に、戦後に戦争犯罪に問われないようにするための戦略として「無条件降伏」を発案したと推測する。アメリカの占領政策はすべて核使用という戦争犯罪を秘匿するために実施されたという推測がその後に来る。実際、日本で2つの核爆弾が使用された後、国務省等の著名な高官が動揺していたことが証言(文書)から明らかになる。この動揺をねじ伏せたのが、占領政策を実施に移したトルーマン大統領らの政治判断だ。今も、核について、日本はアメリカの戦争犯罪を糾弾するのではなく、自らを含めて(人類は)「もう過ちを繰り返さない」と宣言する。これこそが、隠蔽されたアメリカの占領政策(日本人みずからの意思でアメリカの隠れた意図を体現する)の意図の実現にあたる。とすると、核の使用の世界史的な意味を白日の下にさらすことは日本にとっての自立の第一歩となる。これがこの本の中心的な主題のようにおもえる。そして、そのための戦略として、左折の憲法改正が主張されることになる。全体の論理構成はなかなか大変だったろうなと思うが、この論点は論理の運びとは別に大変魅力的な推測とおもう。