加藤典洋の「敗戦後論」を読んだ。もう20年近く前の著作だが、集団的自衛権が大きな政治的焦点となっている今、もっともポレミックなテーマを提供している批評だ。

 簡単に要約すると、日本人は「被害者」としても「加害者」としても太平洋戦争(あるは大東亜戦争、自分にとってはどういっても変らない呼称なのだが)の敗戦とその犠牲者の意味を主体的に吟味し、共有財産として価値化できておらず、したがって、護憲派(加害を強調)も改憲派(被害を主張)も、実は相補的に共有財産としての理解を所有していない日本人の現状を象徴する盾の表裏だという主張だ。

 加害者であった日本の戦死者を痛む(という「ねじれ」を根元におく)理念がそれによってアジアの加害者に対する哀悼の理念に繋がりうるのか、その「ねじれ」こそが戦後という枠組みの核にあるものであり、ひいては戦後という枠組みを超出する根拠ともなる、ということかと思う。戦後レジームの脱却という思想は自民党改憲草案とも合わせて考えると結局、「ねじれ」の解決ではなく否定であり、戦前に戻りたいという古びた保守反動の表現にしかなっていない。

 今も古びない「敗戦後論」は、日本の理念としての戦後がいまだに超えられていないことを実証していると感じさせた。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/加藤典洋 

蓮實重彦の「反=日本語論」を読んだ。30年前の著作で、ポスト構造主義の思潮を踏まえた著者の反「制度」的批評の走りの文章だ。フランス人の奥さん、フランス語と日本語を話すバイリンガルの子息、という家族環境の中で遭遇する言葉をめぐる齟齬と驚きの体験が、言語(国語)という「制度」をあぶり出す。私たちが自明とする言葉は実は充分制度化され強いられたもので、別の制度から見れば奇異なものだ。しかし、奇異と感じること自体が実は制度化された思考に毒されている。反=**とはこのような制度を相対化する思考を指している。もちろん、この「制度」は「構造」と言ってもいい訳だ。それにしても、西欧の「制度」を論じる蓮實さんの論に、江藤淳の「アメリカと私」と共通する嘆きを感じる。そこが、蓮實さんのフランス体験の核にあるものかも知れない。

「反=日本語論」 http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480020437/ 

図書館の新たなサービスとしてLearning Commonsが我が国で話題になって10年弱が経とうとしている。業界団体の仕事で、国内の文献と海外の文献をあたってみている。おおむね、Donald Beagleの解釈が、すくなくとも日米で主流となっている気がした。言い換えれば、DBの普遍的解釈があれば、日米の大学図書館員の体験に基づく理解はそれに包括されるように思う。DBの解釈をどのように咀嚼して、実践的な指針とするのか、秋にかけて、自分の大きな課題となりつつある。

DBの著作から

http://www.educause.edu/library/resources/learning-commons-learning-outcomes-assessing-collaborative-services-and-spaces

http://www.worldcat.org/title/information-commons-handbook/oclc/71312660

ブラッドパックの一人だったアメリカ人俳優のAndrew McCarthyのtwitterをフォローしたところ、フォロー仕返された。昔は雑誌等でのぞき見るだけだった(しかもハリウッドの)有名人がSNSで簡単に「繋がる」時代となったことを感じる。とても不思議だ。

Andrew McCarthyのtwitter

 https://twitter.com/AndrewTMcCarthy?refsrc=email

アンドリュー・マッカーシー

 http://ja.wikipedia.org/wiki/アンドリュー・マッカーシー 

大江健三郎の「「雨の木」(レインツリー)を聴く女たち」を30年ぶりに再読した。吉本隆明の「マスイメージ論」で、村上春樹の「羊をめぐる冒険」とこの「レインツリー小説」が時代を象徴する小説として高く評価されているのを読んで、単行本を購入した。「雨の木」(という暗喩)が初老の作家の「死に向けて年齢を重なる」ということの解体感性をとても抒情的にに表現している。(作品から)「ハワイの「雨の木」は、この島で繰り返される深夜の驟雨を、葉の窪みに一滴づつためこむようにしてたくわえ、次の昼すぎまで滴をしたたらせつづける」。その滴りは死に向かって年を重ね、様々な過去の記憶からくる者の憂鬱を癒すメタフォーだ。大江さんのうねるような思弁的な文体が独自の抒情性を紡ぎだす秀作。 http://ja.wikipedia.org/wiki/「雨の木」を聴く女たち http://books.google.co.jp/books/about/マス_イメージ論.html?id=ElOgmQEACAAJ&redir_esc=y

モリー・リングウオルド

Pretty in Pink のモリー・リングウオルドが、歌手、作家としても活躍していることを知った。早速、彼女のジャズアルバムを購入。亡くなった監督ジョン・ヒューズへの想いを述べたニューヨークタイムズのインタビューも琴線に触れるものがあった。ブラッドパック達の主演映画に心を奪われた時からもう30年。(概ね)同世代の俳優の現在にあれこれと感慨にふける。

Pretty in Pink

http://ja.wikipedia.org/wiki/プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角 

ニューヨークタイムズの追悼記事(見事な文章だ。さすが作家)

http://www.nytimes.com/2009/08/12/opinion/12ringwald.html?pagewanted=all&_r=0

シンプルマインズのDon't you?のジャズバージョン(モリーが歌ってる!)

http://www.youtube.com/watch?v=ToPgCfaIuz0 

参宮橋のイタリアン

先日、オリンピック青少年センターであった会議に参加したおり、最寄りの参宮橋駅の真横にあるイタリアンレストランでランチを頂いた。3200円のコースで、前菜、野菜の盛り合わせ、茄子のトマトソースパスタ、肉のメイン、デザート、エスプレッソの組み合わせだった。白と赤の2本のワインを4人でシェアして、しめて5000円。悪くないコスパだった。特に野菜が新鮮で、ソースも美味しかった。赤ワインは今一つ。でもまあ、わいわいと食事を楽しむにはよい雰囲気とサーブでした。

http://il-vischio.com/