中公新書「新型コロナの科学」(黒木登志夫著、2020年)を読了。著者は癌研究の第一人者で元岐阜大学長。2020年発生のコロナについて、感染症としての科学的理解、各国の対策、日本の対策、対策のプロとコンについて分かりやすいコンパクトな情報を提供している。今、コロナの本質理解、科学的対策の現状、政策の過失と有効性などを知ろうとする人には最適の本(の一冊)とおもう。何より、偏見のない科学者の姿勢が全体の説明の透明性を保証しているところが(当たり前の前提なのだが)推薦できる理由だ。

 本の内容に関して指摘しておきたい点は2点。これまでも旧コロナを含めたウィルスとの最大の相違が無症状の感染者があるという点。このため、有症状の感染者だけを対象にしてPCR検査しても感染拡大は防げないので、無症状を対象とした検査を行い、陽性者を隔離する必要があるということだ。世界のコロナ対策のスタンダードもこれだ。

 一方、厚生労働省が、PCR検査拡大を阻止する活動を行なっていたことだ。これに対する科学者、医療関係者の要請を拒否し続けた同省の対策ミスは明確であるということ。これは今も継続している行政施策の失敗だ。

 SNSでも検査抑制論がまかり通る現状を素人の立場から合理的=科学的に判断する良い情報を与えてくれる本書を強く推薦する。出版情報は下記から。

 

www.chuko.co.jp